欧州単一特許制度

 

 よくあるご質問

欧州単一特許パッケージ

Q:欧州単一特許パッケージとは何ですか?
欧州単一特許パッケージは、2つのEU規則と新しい協定で構成されており、2012年12月にEU議会と理事会で承認されました。
EU規則1257/12は、「単一効を有する欧州特許」(Unitary Patent)を創設するものです。
EU規則1260/12は、欧州単一効特許の翻訳に関する取り決めを定めたものです。
統一特許裁判所(UPC)協定(2013年1月11日付EU文書16351/12)は、従来の欧州バンドル特許と欧州単一効特許の両方について、参加国での訴訟のための統一特許裁判所制度を創設するものです。
また、統一特許裁判所協定の暫定適用に関する議定書(以下、PPA)は、13の加盟国がPPAを承認することを正式に通知した翌日の2022年1月19日に発効しました。同議定書は、裁判所が正式に訴訟受付を開始する前に、裁判官と職員を雇用し、その他実質的にすべての組織上の措置を取ることを認めています。

Q:これらのパッケージの関係は何ですか?
欧州単一効特許規則は、統一特許裁判所協定(UPCA)と同じ日に発効することが規定されています。

Q:このパッケージはEU全域で有効ですか?
このパッケージは、統一特許裁判所協定(UPCA)を批准している国のみに適用されます。例えば、スペインは自国語への翻訳が不要であることを主な理由としてこのパッケージを支持していません。そのため、EU条約の規定で、全会一致が達成できない場合に、EU加盟国の過半数の合意で進めることができる「強化された協力」に基づいて、パッケージは進められています。2021年12月1日現在、統一特許裁判所協定を批准している国は以下の16カ国である。オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スウェーデンの16カ国、およびドイツ議会の両院は批准を承認しています。ドイツの批准のあと、約4ヶ月の期間が設けられた後に統一特許裁判所の開始されることになります。ドイツは、統一特許裁判所運営委員会がその期間内に開廷準備を完了できると判断するまで、批准の通知を保留する予定です。以下のEU7カ国はUPCAに署名しており、同協定を批准した後に参加することができます。キプロス、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ルーマニア、スロバキア。ただし、英国はEUを離脱したため、本パッケージには参加することはありまえん。

Q:統一特許裁判所協定に署名・批准していないEU加盟国が、後から参加することは可能ですか?
はい。この可能性は、当初署名も批准もしなかった国や新規加盟国を含むすべてのEU加盟国に開かれています。欧州単一効特許と統一特許裁判所に最も異論を唱えていたスペインは、現在、加盟に向けて動き出しているようです。

Q:ノルウェー、スイス、トルコ、イギリスなどEU圏外のEPC加盟国は、統一特許裁判所や統一特許に参加できますか?
いいえ、現在の取り決めではできません。欧州単一効特許は、EUの規則によって、EU加盟国のみを対象として創設されるものである。
欧州連合司法裁判所(CJEU)は、2011年にEU以外の国が特許裁判所に参加することはEU条約に矛盾するとの判決を下しています。

Q:欧州単一特許パッケージの発効はいつ頃になりそうですか?
現在のところ2023年初頭と予測されます。ドイツが統一特許裁判所協定に批准してから約4ヵ月後に統一特許裁判所の開始がトリガーされると常に理解されています。

欧州単一効特許規則について

Q:欧州単一効特許規則とは何ですか?
2017年12月17日のEU規則第1257/12号で、欧州特許庁(EPO)が、13以上の参加EU諸国(統一特許裁判所にも参加する必要がある)に対して、欧州単一効特許(Unitary Patent)を発行できるようにする法令です。

Q:欧州単一効特許とは何ですか?
欧州で単一効力を有する特許のことです。欧州単一特許システムは、従来の国内特許システムや従来の欧州バンドル特許と共存することになります。出願人は、従来の欧州バンドル特許と欧州単一効特許の様々な組み合わせで有効にすることを選択できるようになります。

Q:EPOの役割は何ですか?
特許付与されるまでの審査過程では、EPOは現在と同じ役割を担います。発効日以降、出願人は、統一特許裁判所協定(UPCA)を批准しているEU加盟国のための欧州単一効特許を取得するか、それらの加盟国に対し有効化する従来の欧州バンドル特許として取得するかを選択することができるようになります。

Q:欧州単一効特許の出願方法は?
EPOに対し、従来の特許の出願を行います。別途、別の出願をする必要はありません。特許が付与される際に、欧州単一効特許を取得するか否かの判断がなされます。

Q:欧州単一効特許規則が発効する前にEPOに出願された出願への影響はありますか?
出願人は、少なくとも2007年3月1日以降に出願され、欧州単一特許制度が発効した時点で係属中の出願を、欧州単一効特許として有効化することができるようになります。

Q:特許が付与された後にEU諸国が欧州単一特許制度に批准した場合、すでに取得している欧州単一効特許の有効国にそのEU諸国を追加されますか?
いいえ。欧州単一効特許としての効力の範囲は、特許が付与された時点で決定されます。他のEU諸国やEU圏外のEPO加盟国での保護は、特許付与時に従来の欧州バンドル特許で有効化するか、別途国内特許出願をすることでしか得られません。

Q:欧州単一効特許の特許料は、従来の欧州バンドル特許と比較してどうなりますか?
特許料は従来の欧州バンドル特許で4~5か国程度を有効化する場合の特許料であると想定されます。

Q:コストを削減するために、数カ国のみで欧州単一効特許の有効化することはできますか?
いいえ。特許付与時に欧州単一効特許を選択した場合、その時点で批准しているすべてのEU加盟国が対象となり、それ以上でも以下にもなりません。

Q:欧州単一効特許を維持に保つために、各参加国に更新料を支払わなければならないのでしょうか?
いいえ。欧州単一効特許の年金は一括して、一度だけEPOに支払われます。

Q:年間維持費を削減するために、一部の国で欧州単一効特許の適用を取り消すことができますか?
いいえ。現在、一部のユーザーでは、年間維持費を節約するために、数年後に一部の国での特許の維持を停止していますが、欧州単一効特許を選択した場合は、このようなことはできなくなります。欧州単一効特許として登録させるか、それとも従来の欧州バンドル特許として各国に有効化させるかを決定する際に、この点が判断基準の一つになると思われます。

Q:欧州単一効特許の翻訳要件は何ですか?
最長12年の経過措置期間中は、欧州単一効特許の登録に際して翻訳が必要になります。
欧州特許庁での手続言語が英語の場合,特許権者は欧州特許を欧州連合の他の公用語に翻訳したものを提出しなければなりません。

Q:経過期間後の統一特許の翻訳規定とは?
移行期間終了後は、機械翻訳によるものに置き換わります。EPOは、Googleと共同開発した機械翻訳プログラム「Patent Translate」を立ち上げており、機械翻訳の精度が十分に高くなれば、出願人による翻訳は不要になると予想されています。

統一特許裁判所

Q:統一特許裁判所協定とは何ですか?
EU加盟国26カ国(ポーランドとスペインを除く)が、欧州特許の侵害と有効性に関する裁判を扱う統一特許裁判所(UPC)システムを構築するための協定です。

Q:統一特許裁判所の管轄はどうなりますか?
最終的には、統一特許裁判所は、参加国において、従来の欧州バンドル特許と欧州単一効特許の両方に関する訴訟の専属管轄権を持つことになります。しかし、7年間の移行期間中(場合によってはさらに長い期間)、従来の欧州バンドル特許の権利者は、統一特許裁判所管轄からオプトアウトし、国内裁判所の管轄を選択することができます。

Q:統一特許裁判所の主な構成は何ですか?
統一特許裁判所は、中央部、地方部、地域部を有する第一審裁判所と、控訴裁判所で構成されます。

Q:中央部とは何ですか?
第一審裁判所の一部門であり、欧州に居住していない当事者に対する裁判権も含め、全般的な裁判権を有します。中央部は、侵害と有効に関する決定を下すことができます。

Q:中央部はどこにあるのですか?
中央部の本部はパリにあります。ミュンヘンには、主に機械工学に関連する事件を扱うパートが置かれます。UPCAでは、中央部のロンドン支部が医療機器と医薬品に関する事件を扱うことを想定していましたが、英国がEUから離脱したため、パリとミュンヘンにのみ中央部を置くことが予定されています。

Q:地方部とは何ですか?
地方部は、要請に応じてEU締約国に設置されます。地方部は、中央部に代わって欧州特許侵害訴訟を処理する管轄権を持つことになります。訴訟は、実際に侵害が発生し、または発生するおそれがある加盟国、あるいは被告が居住する加盟国が主催する地方部に提起することができます。

Q:地域部とは何ですか?
地域部は、少なくとも2つの締約国の要請により設置することができます。地域部は、地方部と同様の管轄権を有します。

Q:地方部や地域部は、無効に関する事件についても判断することができますか?
被告が無効訴訟を提起した場合、地方部又は地域部は、(a)侵害訴訟と無効の反訴の両方を進める、(b)無効の反訴を中央部に判断を委ね、侵害訴訟を中断又は進める、(c)当事者の合意により、中央部に判断を委ねる、という裁量権を有します。

Q:統一特許裁判所ではどのような言語が使用されるのでしょうか。
UPCA第49条は第一審裁判所における手続の言語について規定しています。
中央部での裁判では、当該特許が付与された言語を使用します。
地方部または地域部では、その部に参加している締約国によって指定された1つまたは複数の公用語です。しかし,これらの国は,欧州特許庁の公用語(英語,フランス語又はドイツ語)のうち1つ又は複数を,その地方部又は地域部で使用するために指定することもできる。
地方部又は地域部の事件の当事者と管轄のパネルが合意すれば、特許が付与された言語を手続言語として使用することができます。
UPCA第50条は、控訴裁判所での訴訟の言語は、通常、第一審での訴訟の言語でなければならないと規定しています。しかし、当事者は、訴訟の言語として特許が付与された言語の使用について合意することができ、または当事者の合意により、控訴裁判所は訴訟の全部または一部について締約国の他の公用語を使用することを決定することができます。

Q:控訴裁判所はどこに置かれるのですか?
控訴裁判所はルクセンブルグに設置される予定です。

Q:欧州連合司法裁判所(CJEU)はどのような役割を果たすのですか?
統一特許裁判所は解釈を必要とするEU法の問題をCJEUに照会し、予備的な判断を仰ぐ権限を持つことになります。

Q:裁判官は誰になるのですか?
統一特許裁判所は、国際的に構成されたパネルで構成され、法律的な資格を持つ裁判官と技術的な資格を持つ裁判官で構成されるとになります。

 

欧州単一特許制度に関して何か質問がありましたら、問い合わせホーム、または、
日本人スタッフ(koide@dpat.de)までご連絡くださいませ。お待ちしております。

小出 輝

アソシエイト

元日本国特許庁 審査官・審判官

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